思考の整理学

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

内容

学校教育において、知識を蓄えることに優秀である「グライダー人間」が作られている。
グライダーは飛行機と違い自らの力で飛ぶくとはできない。しかし、学校では自らの力で飛べる「飛行機人間」を育てることはされない。時にグライダーは飛行機より美しく、グライダーにとって飛行機は邪魔なものとされる場合がある。
しかし、「知識を蓄える」という点ではいくら優秀なグライダー人間でもコンピュータに勝ることはできない。受身で知識を得ているだけでなく、知識を得ることと、自ら考えることの両方の出来る人間にならなければならない。そのためには、考えること、思考の整理が必要である。

感想

著者はあとがきで、ハウツウ物にならないように書いた、と記している。
概ねそのとおりで、具体的なメモの取り方なども例として出ているものの、その方法よりもどう考えるか、どういった心構えがいるのか、どういう効果があるのかといった点から書かれている。

ただ知識をためるだけではなく、それを取捨選択し、時間を置く。その課程を繰り返して残っているものが、自分の身になる。この本では、その時を重ねる課程を短くする方法などについても書かれている。

思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である。

これが、この本の最も大事な部分ではないか、と思う。
20年以上の時を経てなお読まれている本、それでも今の自分や社会に必要なことが書いてある。

ただ一つ残念だったのは、本の帯。
「東大・京大で一番読まれた本」「東大生の熱い支持多数!」といった文句が、若干軽く感じられ、この本にはあまり合わない。